ヒートポンプの床暖房について知りたい! 仕組みやメリットは?

冬場に大活躍する床暖房には、さまざまな種類があることをご存じでしょうか。その中でも、大気中の熱を利用して温水をつくり、床暖房に生かしているのが「ヒートポンプ式の床暖房」です。ヒートポンプ式の床暖房を上手に活用するためには、メカニズムや特徴などの知識をきちんと身につけておかなければなりません。そこで、本記事では、ヒートポンプの床暖房の基礎知識や給湯器(エコ給湯器)の床暖房・業者の選び方などについて説明します。

  1. ヒートポンプとは?
  2. ヒートポンプと床暖房について
  3. 給湯器の床暖房について
  4. ヒートポンプ式給湯器~業者の選び方
  5. ヒートポンプと床暖房に関してよくある質問

この記事を読むことで、ヒートポンプによる床暖房について詳しく知ることができます。導入を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

1.ヒートポンプとは?

ヒートポンプが一体何なのか、分からないまま導入すると失敗するおそれがあります。まずは、ヒートポンプの基礎知識をしっかりと把握しておきましょう。

1-1.どんなものか

ヒートポンプは、空気中の熱をポンプのようにくみ上げて、大きな熱エネルギーとして利用する技術のことです。つまり、熱を集めて運ぶシステムといえます。
ヒートポンプが熱を運べるのは、冷媒となる圧縮したガス・フロンガスを使うからです。ヒートポンプ内には、低沸点の冷媒が循環して熱を移動させています。以下に、低温の冷媒から温水ができるまでの流れを以下にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

  1. 低温の冷媒(液体)が蒸発器で熱源から熱を獲得し気化する
  2. 気化した冷媒が圧縮器で加圧され、温度が上昇する
  3. 昇温したガス状の冷媒が熱交換器に移り、熱をもらった温水が室内へ供給される

また、ヒートポンプの種類は「冷媒の発熱・吸熱を利用したもの」「空気熱以外を利用したもの」「格子振動を利用したもの」の3つに大きく分かれています。それぞれの特徴についても、以下にピックアップしました。

<冷媒の発熱・吸熱を利用したもの>

  • 蒸気圧縮ヒートポンプ・吸収式ヒートポンプなど
  • 液体が気化する際に発する気化熱や、凝縮熱を利用する

<空気熱以外を利用したもの>

  • 地中熱・水源熱・太陽熱などを利用したヒートポンプ
  • 空気熱よりも効率よく熱を運ぶことができる

<格子振動を利用したもの>

  • 半導体を利用したヒートポンプ
  • 電流を熱電素子に流し、素子内部に格子振動が起こると熱移動ができる

1-2.使用シーン

日常生活のシーンで、ヒートポンプが使われています。たとえば、家庭用の給湯器です。エコジョーズやエコキュートなどの省エネ給湯器は、ヒートポンプの仕組みを利用しています。また、業務用の給湯器・エアコン、冷凍庫・冷蔵庫・床暖房にも取り入れられているのです。

1-3.メリット

ヒートポンプの大きなメリットは、エネルギーを最小限に抑えながら、使用したエネルギー以上の熱エネルギーが獲得できることです。大切なエネルギーを有効に使うことができ、暖房・冷房どちらにも利用できます。さらに、二酸化炭素の排出量も削減できるため、地球温暖化防止に役立つでしょう。また、高効率なので電気代の節約にもつながるなど、たくさんのメリットがあります。

1-4.注意点

ヒートポンプは省エネや環境保全につながる仕組みとして注目されていますが、寒冷地では効果が期待できない点がデメリットです。室外の空気熱を吸収して熱をくみ上げるため、寒冷地では十分なエネルギーが吸収できません。また、熱を奪う際に結露するおそれがあります。寒冷地で使用する場合は、デメリットをいかに克服できるかが課題となるでしょう。

2.ヒートポンプと床暖房について

ヒートポンプは、床暖房にも使われています。一体、ほかの床暖房とどのような違いがあるのでしょうか。

2-1.床暖房とは

床暖房は、放熱器を床下に設置して、床面から室内を暖める方法です。床から直接伝わる熱と、床から部屋全体に広がる熱を組み合わせています。従来の床暖房は、ガスや灯油が熱源でしたが、現在はヒートポンプ方式を採用するケースが増加中です。また、床暖房の普及率は約10%と低めですが、今後は増えると考えられています。

2-2.ヒートポンプの床暖房とは?

大気の熱をくみ上げて温水をつくるヒートポンプ方式を用いた床暖房は、ほかの方式よりも少ない電気で効率的に多くの熱を得ることができます。省エネルギーで床暖房が利用できるため、光熱費も大幅に削減できるのです。「暖房効果が低いのでは?」という心配の声もあがりますが、ヒートポンプ方式は、少ない投入エネルギーで、投入エネルギーの倍以上の熱エネルギーが獲得できます。よって、ほかの方式よりも暖房効果が低いというわけではありません。高効率で室内を暖めることができるでしょう。

2-3.ヒートポンプならではの特徴

二酸化炭素を排出しない・省エネルギーで熱が獲得できるなど、ヒートポンプならではの特徴はたくさんあります。ほかにも、費用面での大きな違いがあるのです。ヒートポンプの床暖房は、ほかよりも初期費用が高めとなります。しかし、省エネルギーで熱エネルギーをつくるため、光熱費がかからず、ランニングコストがかかりません。長い目で考えれば、ヒートポンプ方式の床暖房がお得です。
ただし、故障した場合は、すべての部品を取り換える必要があるので、大掛かりの工事となります。費用も高くなるため、注意しておかなければなりません。

3.給湯器の床暖房について

床暖房を導入するためには、熱源となる給湯器が必要不可欠です。それでは、給湯器の床暖房について詳しく説明します。

3-1.ヒートポンプ式給湯器とは

ヒートポンプの仕組みを利用した給湯器のことです。電気エネルギーの3倍以上の熱エネルギーを取り出すことができ、二酸化炭素の発生量も抑えた高効率+エコな給湯器となります。代表的なヒートポンプ式給湯器といえば、エコキュートです。エコキュートは、大気熱を自然冷媒に集め、その熱でお湯を沸かす給湯器となります。高効率でお湯を沸かし、省エネが二酸化炭素排出量の削減につながると、エコ給湯器として好評です。

3-2.床暖房機能について

床暖房を導入する際は、その機能がついている給湯器を使用することになります。お湯を沸かすだけでなく、給湯器の機能を生かして床を暖めることができるのです。近年は、床暖房機能がついている給湯器を選ぶ家庭が増えてきました。特に、寒い時期が長く続く寒冷地では、床暖房機能つき給湯器の導入率が高めです。

3-3.特徴・コストについて

給湯器を1台にして熱源をまとめれば、床暖房と同時にお風呂や皿洗いなどにもお湯を使うことができます。ヒートポンプ方式の給湯器は、初期費用は高めですがランニングコストを抑えることが可能です。本体価格は15~20万円前後、工事費用に3~4万円ほどかかるでしょう。

3-4.向いている家族

両親と一緒に住んでいる・高齢者がいる家庭は、床暖房をおすすめします。床は、直接肌に触れる場所なので、冷たいと体全体が冷たくなるでしょう。また、寒い場所から冷たい場所へ移る際、寒暖差によってヒートショックを起こす可能性があります。ヒートショックによって心筋梗塞を引き起こし、亡くなった方がいるので、床暖房で少しでもリスクを防ぎましょう。

3-5.メリット・デメリット

導入費用が高いというデメリットはありますが、給湯器の床暖房は、給湯機能と一緒に床暖房が利用できる大きいメリットがあります。床暖房を取り入れたい方におすすめです。給湯器の買い替えのタイミングで、床暖房を導入する方も増えているのでぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

4.ヒートポンプ式給湯器~業者の選び方

ヒートポンプ式給湯器を上手に導入するためには、業者の選び方が重要です。ここでは、業者選びのポイントや設置方法・流れ・工期、料金設定、注意点について説明します。

4-1.業者を選ぶポイント

業者選びで悩んだときは、以下のポイントに注目してください。

  • 丁寧かつスピーディーな対応
  • 見積もり内容が明確に記載されている
  • アフターフォローや保証が充実しているか
  • ホームページなどに実例が紹介されているか
  • 無料相談や無料見積もりを受けつけているか

4-2.設置方法、流れ、工期

業者に依頼をすると、現地確認として予約日にスタッフがやってきます。現状を確認した上で、設置したい給湯器を選び、設置工事を行う流れです。既存の給湯器を取りはずし、新しい給湯器を設置するだけなら半日程度で終わりますが、床暖房は床下に温水パネルを敷かなければなりません。そのため、工期が長くても2~3日必要です。また、床暖房を導入する範囲が広いほど工期も長くかかるので注意してください。

4-3.料金設定

床暖房の工事にかかる費用は、目安で50~150万円前後です。床の状態や範囲によって、金額が大きく変わるため、見積もりを出してもらいましょう。きちんと内訳が記載されているか、適切な料金設定かどうか確認してくださいね。

4-4.注意点

「見積書とは違う料金を請求された」など、業者との間でトラブルが多発しています。トラブルを未然に防ぐためには、複数の業者を比較して優良業者と不正業者を見極めなければなりません。

5.ヒートポンプと床暖房に関してよくある質問

ヒートポンプと床暖房に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

5-1.ヒートポンプの寿命は?

ヒートポンプはずっと使い続けられるものではありません。平均寿命は、およそ10~15年といわれています。ヒートポンプ方式の給湯器も、同じ目安で買い替えを考えたほうが良いでしょう。また、使いづらくなる・お湯が温まりにくくなるなどの不具合が起きた際も、寿命が関係しています。給湯器の場合、設置してから2~3年であれば修理で済むかもしれませんが、10年以上経過している給湯器は再び故障するおそれがあるため、買い替えたほうが効率的です。

5-2.人気があるヒートポンプ方式床暖房が知りたい

大手メーカーの「リンナイ」の商品が人気です。特に、省エネ性を重視する場合は、使用電力がカットできるリンナイのエコジョーズをおすすめします。ただ、設置が難しいケースもあるでしょう。難しい現場での施工であれば、「ダイキン」というメーカーがおすすめです。ダイキンは、あらゆる空間設計に配慮した、豊富な提案力が強みとなります。

5-3.ヒートポンプ方式の床暖房は、メンテナンスが必要か?

一般的に、メンテナンスは必要ありませんが、熱源機が故障した場合は別です。熱源機が故障すると、部品交換が必要になることもあります。部品交換をする際に、メンテナンスもしてもらったほうが良いでしょう。また、寒冷地で使用している場合は、凍結のおそれがあるので定期的なメンテナンスが必要となります。使用場所などでメンテナンスが必要になることもあるのです。

5-4.オール電化とは?

給湯・調理・冷暖房などすべてのエネルギーに使う熱源を電気にすることをオール電化といいます。ヒートポンプ方式の床暖房はオール電化向きです。そのため、オール電化にする際に、一緒にヒートポンプ方式を導入するという方も増えています。オール電化は、安い深夜電力を利用するので電気代が節約可能です。また、ガスよりも安全性が高いので、安心して利用できます。

5-5.上手に床暖房を配置するコツとは?

すべての床下に床暖房を設置すると、それなりの費用がかかってしまいますよね。すべてに配置するのではなく、足が触れる場所や人が移動する動線の部分だけに設置してください。ソファーやテーブル・テレビ台など置かれている部分は設置しません。そうすることで、床暖房の範囲が狭くなり、その分の設置費用とランニングコストを抑えることができますよ。

まとめ

いかがでしたか? ヒートポンプは、大気中の熱を吸収して大きな熱エネルギーに変える装置です。高効率で熱エネルギーを生み出すため、光熱費の節約につながります。床暖房にもさまざまな方式がありますが、光熱費削減・省エネルギーという点からヒートポンプ方式に注目が集まっているのです。ヒートポンプ方式を利用した床暖房を導入する際は、導入範囲や必要な場所を明確にしておきましょう。きちんと基礎知識を身につけておかば、安心して依頼できる業者に依頼し、理想的な床暖房が導入できます。