
必見!内装工事のデザイン&業者の選び方〜店舗・事務所の開業ガイド
これから店舗オーナーとして新規開業される方、起業に際して事務所を開設される方にとって、最初の関門となるのが内装工事です。
多くの場合、店舗・事務所の物件は大規模な内装工事を必要とします。たとえ居抜きの物件でも、まったく改装を施さずに使用できる…というのは非常に稀(まれ)でしょう。店舗・事務所の業態やコンセプトに合わせて、内装を造り替える必要が出てきます。
こちらでは、店舗・事務所の開業に合わせて内装工事を検討されている皆さんに向けて内装工事の実情を解説することにしました。内装工事業者の選び方など、実践的な知識を掲載していますので、ぜひとも参考にしてください。これさえ読めば、内装工事の準備を具体的に開始できるはずです。
1.店舗・事務所の内装工事とは
店舗・事務所の内装工事は、一般住宅の工事とはまったく異なります。店舗・事務所なら内装工事が終わるまでは開業できません。なので、少しでも早く工事を終えて営業を開始しなければならないのです。一般住宅とは違い、基本的にスピーディーな施工が求められます。
また、店舗・事務所であれば、お客様の目につく場所はきれいに仕上げる必要がある反面、バックスペースなど関係者だけが出入りする箇所は実用性が第一です。一般住宅は居住者の趣味に合わせ、長く住む上で満足感が得られるように施工することが重要。当然、全体的な仕上げも見た目重視になります。
あくまでも商業施設である店舗・事務所の内装工事をする場合、一般住宅とはまったく違う観点から施工しなければなりません。
1-1.内装工事の目的を見定めることが第一!
店舗・事務所の内装工事は利益を最大化することや、より仕事をしやすい環境を用意するために行われます。まずは今回の内装工事はどのような目的のために行うのか。目的意識を明確にする必要があるでしょう。着地点がハッキリしていなければ、工事内容を具体的に検討することはできません。
1-1-1.店舗の集客力を最大化する
集客力を最大化するのなら、店舗の営業実態・方向性に合った方法を考える必要があります。
いつも満席になる飲食店なら、座席数を増やすことが最優先になるでしょう。しかし、オシャレな雰囲気を売りにするカフェであれば、座席と座席の間にある空間を詰めすぎると逆効果になります。落ち着ける空間を求めて来店していた顧客が離れてしまうからです。もちろん、美容室・ネイルサロンなど、顧客がリラックスできる環境を用意するべき業態の場合も同様。隣の客がすぐ近くにいるようだと、居心地の悪さを感じるお客様も多いはずです。
ご自身の店舗がどういった特徴を売りにしているのか。自店舗の特徴を踏まえた上で来客数を増やせるように工夫する必要があります。
お客様の回転率が速い店舗なら、バックスペースを削減して座席数を増やす余地があるかを検討。ゆったりとリラックスしていただく店舗なら、いかに圧迫感を出さずに十分な座席数を確保するかという工夫が問われます。
以上のように、集客力を上げるためには自店舗の特徴を捉え、状況に合わせた工事計画を立てる必要があるのです。
1-1-2.店舗の人件費を削減する
業務を縮小することなく、人件費だけを削減するにはどうすればいいのでしょうか?少ない人数で今までと同じ業務を回すためには、当然ながら、業務効率を上げる必要があります。
この場合、最優先するべきは従業員の動線です。従業員が業務をこなす際の移動距離をなるべく短くすること。さらに、多数の従業員の動線が重複すると渋滞を引き起こしますから、2〜3人ごとに別々の動線を往来できるよう工夫することも大切になるでしょう。
ただ、飲食店におけるドリンクバーなど、お客様が集中するスペースがある場合、従業員の動線をあえてドリンクバー付近に通す…という工夫も考えられます。従業員が少ないせいで店内が寂しい雰囲気になるのを避けるテクニックです。
お客様の視線が集中しやすい場所を絶え間なく従業員が通る…。少ない人数で、活気のあるお店を演出するために役立つ可能性があるのです。お客様にとって居心地のいい空間を作るためには、効率だけでなく、演出面にも気を配ることが大切。
また、特に飲食店などお客様から随時注文が入るような店舗では、従業員の目が行き届くかどうかも重要になります。視界を遮(さえぎ)るような壁を撤去し、少ない人数でも客席全体に目が届くように配慮しなければなりません。
いかにサービスの質を落とさず、従業員の人数を減らすか。細かな工夫を凝(こ)らして、施工内容を吟味する必要があるでしょう。
1-1-3.事務所における人材定着・新規採用を目指す
有能な人材を定着させ、スキルの高い新人を採用することは事務所にとって死活問題となります。最近は福利厚生など環境面を重視する方が増えていますから、やはり快適なオフィス環境を整備することは重要です。
人材定着を目指すなら、コーヒーサーバーなどの設置場所を検討し、付近にリフレッシュスペースを用意する…といった方向性でしょうか。また、従業員がリフレッシュできる環境を重視するのであれば、オフィスであってもデザイン性を重視する必要が出てきます。
また、コミュニケーションスペースを設けるなら、付近に動線を集中させる…といった工夫も面白いでしょう。自然と従業員が集まるので、従業員同士のコミュニケーションが活発化します。また、コミュニケーションスペース前を通る際、自然と探している相手が見つかる…といったメリットが得られる可能性もあるでしょう。
1-1-4.事務所の業務効率を向上させる
事務所の生産性を上げるためには、余分な物品を排除して、効率的にスペースを使用しなければなりません。要するに、限られたスペースを最大限に活用するわけです。
まずは従業員の動線を効率化すること。なるべく短い移動距離ですべての業務が完結するように工夫しましょう。もちろん、特定の動線に人が集中すると、スムーズに移動できなくなる恐れもあります。どれくらいの頻度で、どれくらいの人数が1つの動線上を動くのか。常にスピーディーに移動できるよう配慮しなくてはなりません。
また、事務所内にデッドスペースがあるなら、ぜひとも有効活用したいところです。デッドスペースを作業スペースに変えることで、動線の確保がしやすくなります。また、従業員1人あたりの執務スペースが広がれば、それだけ作業効率が向上する可能性もあるでしょう。
現状の動線は十分か、1人あたりの執務スペースは適性か…など、現在の業務効率を検討した上で、最適化を試みることになります。
1-2.店舗・事務所の内装工事〜工事規模を考える!
ひとくちに内装工事といっても、規模に応じて予算は変わってきます。たとえば、クロスの張り替えは最も手軽な内装工事です。予算は“平米単価×部屋の壁面積”を計算するだけで求められるでしょう。ミニマルな事務所を開業するだけなら、クロスを新調するだけで十分という可能性もあります。
逆に調理場を必要とする店舗を開業するなら、大規模な工事になるでしょう。実際、飲食店の調理場工事は最も高額な内装工事になります。多くの場合、内装工事における費用の20〜40%が調理場設備の費用です。
もし、限られた予算で飲食店を開業するのなら、すでに調理場が備え付けられた居抜き物件を探す必要があるでしょう。調理場がそのまま使えるなら、クロスの張り替えを実施。あとは、店舗のイメージに合わせた内装を整える…といった工事規模に留(とど)めることが可能です。
予算に応じて、工事規模をコントロールする…という考え方で臨めば、より現実的な工事プランを立てることができるでしょう。
2.店舗の内装工事ではデザイン性も重要!
事務所・店舗の新規開業に際しては、デザイン性にも力を入れなくてはいけません。飲食店・美容室など、店舗の内装が顧客満足度に直結する業態であれば、特にデザイン面の重要性が高くなります。
ともすると、費用・業務効率ばかりに目が行きがちですが、客商売であることを忘れてはいけません。
2-1.デザイン性と費用・実益のバランス
内装工事の費用は開業資金の中で大きな割合を占めます。特に飲食店の場合、内装工事のために開業資金の50%以上を使うことになるでしょう。
装飾が少なく、必要な設備を揃(そろ)えるだけの内装工事をすると、一般的な飲食店で坪単価30〜50万円程度が相場になります。費用を抑えながら見栄えをよくするなら、壁をコンクリート打ちっ放しにする…といった方法が考えられるでしょう。しかし、コンクリートがむき出しになった壁は断熱性が低く、空調効率が悪化するというデメリットがあります。空調効率の悪化は、お客様が快適に過ごせる空間づくり…という観点から見るとマイナスです。また、電気代の上昇を招き、運転資金を圧迫する要因になる恐れも…。
実益と勘案しながら、デザイン面をどうするか考える。初期費用のうち、内装工事費に使える金額を計算しながら、ベストな選択を導き出さなければいけません。内装工事のプランニングは、店舗オーナーの経営センスが問われる最初の関門なのです。
2-2.集客のためのデザインとは?
さて、店舗の内装が顧客満足度・集客力に大きな影響を与えることはすでに解説しました。しかし、集客力の高い内装とは、いったいどのようなデザインなのでしょうか?
基本的には“お客様の期待を裏切らない”というのが第一になります。たとえば、本格的なバーなら、お客様はどのようなカウンターを期待しているかを考えてみてください。おそらく、木製のシックなカウンターが迎えてくれることを望んでいるはずです。本格的なバーを期待して入店したお客様が、プラスチック製でパステルカラーのカウンターに通されたら、きっと“期待外れ”を感じることでしょう。
同様に、和風の居酒屋に座敷や掘り炬燵(ほりごたつ)の席がなかったら、やはり雰囲気に合いません。オシャレなカフェにプラスチック製の椅子…というのも、やはりチープな印象が拭(ぬぐ)えないと思います。
もちろん、店舗に明確なコンセプトがあり、それが良い意味で意外性を生むなら問題はありません。あえてポップな雰囲気を打ち出すなら、バーにパステルカラーのカウンターを設置するのも合理的です。同じく、和洋折衷のイメージを打ち出した居酒屋であれば“和風の内装にテーブル席”という内装でも大丈夫でしょう。
お客様の期待に応える内装になっているか。あるいは、お客様に意外性を提示できるコンセプトが成り立っているか…を考える必要があります。単に装飾を施せばいいというものではなく、お客様の目線で考えることで“集客に適したデザイン”が見えてくるわけです。
3.内装工事の事例紹介〜実例から考える!
それでは、実際の内装工事を取り上げて“具体的にどれくらいの費用がかかるのか”をチェックしてみたいと思います。百聞は一見にしかず…です。実際の施工事例を知ることで、具体的な内装工事のプランが浮かび上がってくる部分もあるでしょう。
3-1.壁紙・クロス張替えリフォーム
内装工事の中でもっとも手軽なのが、クロスの張り替えです。多くの場合、基本料金に床養生・下地調整・産業廃棄物処理、さらに古いクロスの撤去が含まれています。
普及品のクロスで1平米あたり1,000円、少しグレードの高いクロスを張る場合でも1平米あたり1,500円くらいが相場です。クロスの張り替えだけ…という場合、施工期間は1日あれば十分でしょう。
3-2.飲食店の内装工事
ここでは、大衆居酒屋の内装工事を例に取ることにします。カウンター5席、テーブル席が20席、お座敷が14席という規模。内装設備がまったくないスケルトン物件を居酒屋に造り替えた事例です。店舗内のレイアウトを1から決定し、さらに調理場設備を新設しました。費用は900万円で、施工期間は30日間となっています。
参考のため、もし居抜き物件だったら…という計算もしておきましょう。平均して、調理場設備にかかる費用は施工費用全体の30%前後です。居抜き物件であれば施工費用を600万円程度に抑えることも可能だと思います。
3-3.美容室の内装工事
まずは、最大で4人のお客様を同時に施術する…という小規模な美容室の事例です。スケルトン物件を1から改装しましたが、それほど華美な装飾は施していません。どちらかといえばミニマルな内装になっています。施工費用は350万円、施工期間は20日間でした。
もう1つ、美容室の事例を紹介しましょう。最大で7人のお客様を同時施術する美容室の場合です。さらに、木材・レンガなどを用いてヨーロッパ調の洗練されたデザインにしました。こちらは居抜き物件を用いたにもかかわらず、施工費用は550万円、施工期間は25日間となっています。細かなディテールまで含めてインテリアにこだわると、居抜き物件の施工費用がスケルトン物件を上回る可能性もある…というケースです。
3-4.事務所の内装工事
こちらは、事務所の施工事例です。広さは47平米で、マネジメント業務のオフィスになります。特別な設備を必要としない業種だったこと、面積があまり大きくないことから、施工費用は112万円となりました。
事務所の場合、飲食店における厨房、美容室におけるシャンプー台のような設備が不要なので、基本的には店舗よりリーズナブルになります。
4.内装工事の業者を選ぶためのポイント
さて、内装工事をするにあたって、施工業者はどのように選べば良いのでしょうか?こちらでは“失敗しない施工業者の選び方”を解説したいと思います。内装は店舗・事務所の顔になりますから、責任を持って施工してくれる業者を選ぶことが大切です。
4-1.創業年数・施工経験数は十分ですか?
信頼できる業者を選ぶ上で最初にチェックしたいポイントは、やはり施工経験です。創業年数が長ければ多くの工事を行ってきた証明になります。特に10年、20年と続いている業者は、長い期間にわたって顧客から信頼される仕事をしてきたわけですから、やはり信頼度が高いといえるでしょう。
また、公式サイトに施工事例・施工実績が掲載されているかどうかも重要なポイント。施工件数を数字で記述するより、実際に施工した店舗・事務所の写真を公開している業者のほうが安心できます。
4-2.具体的で分かりやすい提案内容でしたか?
担当者に問い合わせ・相談をした際、きちんと分かるように説明してくれたかどうか…というのも重要です。図面を見せるだけでなく、素人でも分かるように具体的に説明してくれる業者を選んだほうが、トラブルが少ないでしょう。
また、問い合わせのときには、担当者が“業種に応じた店舗デザイン”を把握しているかどうか確認してみてください。専門的な質問をいくつかぶつけてみて、相手の返答を吟味する方法がオススメです。
4-3.きちんと相見積もりを取りましたか?
業者選びの際には、ぜひ、複数の施工業者に見積もりをお願いしてください。ただし、何も考えずに安い業者を選ぶのは考え物です。見積もり結果が出たら、“なぜ、この金額になるのか”を質問してみましょう。良心的な業者なら、きちんと答えてくれるはずです。
もし、予想より高額だった場合は、仕上げ材のグレードを下げることでコストダウンが図れないか確認してみてください。きちんとした業者なら、可能な範囲でコストダウンする方法を提案してくれると思います。
4-4.アフターメンテナンスは充実していますか?
内装工事を経た店舗・事務所は、これから長く営業していくための拠点です。当然、設備の維持・管理を考えなければなりません。壁紙の剝がれ、水回りのトラブル、空調の不具合…など、経年劣化に応じてさまざまな問題が生じる可能性があります。
やはり、内装工事を行った業者のほうが、状況を把握している分、修理・修繕がしやすいはず。施工業者を選ぶときには、こういったアフターメンテナンスに責任を持ってくれる業者を選んだほうが安心です。
5.内装工事の修繕・修理体制
内装工事業者が実施するアフターメンテナンスには、一般的にどのようなものがあるのでしょうか?こちらではメンテナンスの種類・必要性に関して解説することにしましょう。
代表的なメンテナンスとしては、電気設備・給排水設備・空調換気設備・外観などが考えられます。
5-1.電気設備メンテナンス
照明器具の不調、コンセントの交換・増設、スイッチの交換などが主なメンテナンス内容です。そのほか、店舗のネオンサインなど外観部分の不調に関しても電気設備に含まれるでしょう。店舗・事務所の場合、容易に交換できない場所に電球が設置されていることもあるので、蛍光灯・電球の交換にも専門業者のアフターサービスを要する可能性があります。
5-2.給排水設備メンテナンス
水回りのトラブル全般を指します。店舗(特に飲食店)であればトイレの詰まりなどは顧客満足度に影響する問題です。トラブルが起きた際、すぐに取れ工事などの対応をしてくれる施工業者なら、不意のトラブルを恐れることなく営業することができます。
5-3.空調換気設備メンテナンス
店舗・事務所では天井に埋め込むタイプのエアコンを使っていることが多いです。埋め込み型のエアコンは、故障した時だけでなく、エアコン内部を掃除する際も分解する必要があるのをご存じでしょうか?エアコン内部の汚れは臭いの原因にもなりますので、定期的なエアコンクリーニングは必須。空調換気設備のアフターケアを行っている業者なら、分解を要する作業にもスムーズに対応してくれます。
5-4.外観メンテナンス
看板・エントランスの破損などはもちろん、外壁塗装・雨漏り修繕なども外観メンテナンスの範囲内です。集客を考える上では外観も大切な要素ですから、ぜひ、外壁塗装・外壁補修をはじめとした“見栄えを維持するためのアフターケア”を実施してくれる業者を選択しましょう。
まとめ
以上、店舗・事務所の内装工事を行うための基礎知識でした!
新しく事業を始める上で、拠点となる店舗・事務所の内装は万全に整えたいところです。費用だけでなく、デザイン性・アフターメンテナンスなども含めて、総合力に優れた内装屋さんを選ぶようにしてください。
- 店舗・事務所の内装工事とは
- 店舗の内装工事ではデザイン性も重要!
- 内装工事の事例紹介〜実例から考える!
- 内装工事の業者を選ぶためのポイント
- 内装工事の修繕・修理体制
新規開業・移転の第一歩となる内装工事を成功させることは、事業を成功させるための助走のようなものです。ぜひ、このページの内容を参考に、理想的な店舗・事務所を手に入れてくださいね!