
外壁の補修は必要? 補修すべき症状や外壁の種類・補修方法とは?
外壁は、常に外気と触れ合っている場所です。時間が経過するほど、雨風や塵(ちり)などによって汚れたり、ヒビが入ったりするでしょう。これらを放置しておけば、外壁の下地まで傷むことになり、家全体の耐久性が下がってしまいます。できるだけ、早めに補修や修理を実施しなければなりません。しかし、どのように補修・修理をすれば良いのか方法が分からないでしょう。そこで、本記事では、外壁の種類や補修方法・依頼のポイントなどについて説明します。
この記事を読むことで、外壁補修の必要性について知り、適切な方法が分かります。塗り替えを考えている方は、ぜひチェックしてください。
1.外壁の補修について
外壁の補修をする前に、何のためにするのか、どんなときに必要なのか把握しておかなければなりません。放置の危険性や一戸建てと集合住宅の違いについても説明するので、知識を深めてください。
1-1.何のためにするのか
外壁=美観を保つためのものと思いがちですが、本来の目的は、建物を防水して寿命を延ばすことです。外壁が機能を発揮しているからこそ、建物内への水の浸入を防ぐことができます。ただし、外壁の効力は永遠のものではありません。定期的に、メンテナンスや塗り替えを行うことで、建物の耐久性を保ち続けることができます。外壁の補修は、家全体を守るために必要な作業なのです。
1-2.どんなときにするか
具体的な塗り替え時期は、塗装の種類によって異なりますが、10年に1回が目安と言われています。また、外壁の補修を行うべきサインがあるので、見逃さないように気をつけておかなければなりません。外壁の補修・塗り替えが必要なときは、以下のような変化が出てきたときです。
- 外壁の色あせ
- 外壁を触ったときに白い粉がつくチョーキング現象
- 塗装の膨れと剥離(はくり)
- クラック(ひび割れ)
- シーリング材の塗膜剥(は)がれ・割れ
1-3.放置するとどうなるか
外壁の異常を放置すると、美観を保つことができず、家全体の耐久性も下がることになります。また、雨水が建物内に浸入しては、木材にカビがついたり、腐敗したりという状態が悪化するでしょう。放置するほど、補修工事が大規模になり、工期が長く費用も高くなります。
1-4.一戸建てと集合住宅の違い
一戸建ての場合は、外壁の状態にすぐ気づくことができます。しかし、集合住宅は外壁の範囲が幅広く、高い位置の外壁は簡単にチェックすることができません。いつの間にか、外壁の劣化が進行して雨水が浸入するというケースもあるため、オーナーや管理会社は修繕計画が必要です。住居人が外壁の異変に気づいたときは、すぐに管理会社へ連絡しましょう。大規模な補修工事になるため、一戸建てよりも工期が長くなりますし、費用もかかります。
2.外壁の種類と補修について
外壁の種類や補修が必要な外壁・よくある症状・補修の頻度について詳しく説明します。
2-1.外壁の種類
外壁は、大まかに分けて、8種類があります。それぞれの特徴を、以下にまとめましたのでぜひ参考にしてください。
- サイディング:セメント質と繊維質を主な原料とした外装材。窯業(ようぎょう)系・金属系・木質系・樹脂系など、原料によってさまざまな種類がある
- モルタル:ラスという針金の網などの上に、砂・水・セメントなどを混ぜて練り上げた外壁材。ジョリパット・吹きつけタイル・リシン・スタッコと4種類がある
- ALC(軽量気泡コンクリート):通常のコンクリートよりも4分の1軽いコンクリート
- RC(鉄筋コンクリート):補強されたコンクリートのことで、鉄筋を入れることで引っ張られる力にも強くなる
- レンガ:粘土・頁岩(けつがん)・泥を型に入れて、窯で焼き固められた外壁材
- タイル:粘土・陶土・長石・石英などを砕いて成型し、高温で焼き固めた外壁材
- 漆喰(しっくい):水酸化カルシウムや炭酸カルシウムが主成分でできている外壁材
- 板張り:下見板張りや羽目張りとも呼ばれた木材で、古くから用いられてきた外壁材
2-2.補修が必要な外壁とは?
外壁の汚れが少し気になる程度であれば、すぐに補修をする必要はありません。早めの補修が必要な状態は、0.3mm以上のひび割れが起きているときです。0.3mm以内のひび割れであれば、防水上の問題のない場合がほとんどでしょう。また、自分で補修することができる範囲内です。ただし、0.3mm以上のひび割れは、水が浸入しているおそれがあるため、すぐに補修しなければなりません。ひび割れ以外にも、症状が現れるのできちんと把握しておきましょう。
2-3.外壁の種類別~よくある症状
ひび割れは、外壁の中でもサイディングによくある症状です。サイディングに0.3mm以上のひび割れが発生したときは、すぐに補修しなければなりません。また、モルタルにもクラックが発生します。幅0.3mm以下・深さ4mm以下のひび割れは「ヘアークラック」、幅0.3mm以上・深さ4mm以上のひび割れは「構造クラック」です。これらは、外壁の機能が低下し劣化状態にあります。さらに、外壁を触った際に、白い粉状のものが付着する「チョーキング現象」も、モルタルによくある症状です。
2-4.どのくらいの期間・年数で補修が必要か?
一般的に、外壁のメンテナンスや塗り替えは10年に1回必要と言われています。しかし、環境によっては、劣化が進行しやすく、10年以内に症状が現れることもあるでしょう。10年に1回を目安として、定期的に外壁の状態を確認してください。自分で対処できるほどの症状であれば、業者に依頼する必要もありません。外壁の不具合は、早めに見つけることが重要です。
3.外壁補修の方法
それでは、外壁の補修方法について説明します。
3-1.外壁別の補修方法
現在の住宅において、約8割を占めている外壁材がサイディングです。サイディングの場合は、ひび割れの補修がほとんどで、亀裂が入っている部分にコーキングを充填します。ひび割れの補修は、部分的に色が目立ってしまうので、気になる方は全塗装が良いでしょう。窯素系のサイディングは塗膜の劣化が激しく、全塗装でキレイに塗布し直します。コーキングが劣化した場合は、カッターやペンチなどで既存のコーキングをすべて取りのぞいた後、新規にコーキング充填を行う方法です。
サイディングの次に使用するモルタルも、コーキング充填や防水モルタルの塗布によって補修することになるでしょう。塗膜の浮きや剥がれが発生している場合は、その部分を除去し高圧洗浄でキレイにした後、下塗材・上塗りと行い塗装をしていきます。
ほかに、タイルのクラックや浮きが発生したときは、そのタイル自体を取り換える方法が1番最適です。
3-2.目的別の補修方法
自分でできる補修・日常の補修・業者による補修・特殊な補修と、それぞれの特徴について説明します。
3-2-1.自分でできる補修
ひび割れが0.3mm以下と浅く、広がっていない場合は、自分で必要な道具を用意して補修することができます。たとえば、シーリングの充填をする場合、シーリング材・シーリング材専用プライマー・シーリングガン・マスキングテープ・バックアップ材などを用意しなければなりません。主な方法は、以下の手順で行います。
- カッターで既存のシーリング材に切れ目を入れ、目地内の削りカスやホコリなどを取りのぞく
- バックアップ材やボンドブレーカーなどを使って2面接着する。(2面接着とは、目地底にバックアップ材やボンドブレーカーを設置してシーリング材が付着しないようにすること)
- 壁にシーリング材がつかないように、目地のまわりにマスキングテープを貼る。刷毛(はけ)を使ってシーリング専用プライマーを塗布する
- シーリング材を充填し、へらで押さえながら成形する。最後にマスキングテープを剥がして完成
簡単に感じるかもしれませんが、実際にやってみると難しいです。個人でするのが不安な方は、業者に依頼したほうが安心でしょう。
3-2-2.日常の補修
日常でできる補修は、外壁をキレイにすることです。補修と呼べる内容ではないかもしれませんが、汚れを放置していると外壁の劣化につながります。そのため、雨風やホコリ・塵などで汚れている外壁を、キレイに洗い流してください。ホースを使って水で洗い、タワシなどで軽くこすると良いでしょう。定期的にチェックしておけば、ひび割れにもすぐに気づくことができます。
3-2-3.業者による補修
ひび割れやチョーキング現象などがひどい場合は、自分で補修せずに業者へ依頼しましょう。費用節約のために自分で補修すれば、逆に、状態が悪化してしまいます。ここは、プロである業者に任せたほうが安心です。補修前にきちんと状態をチェックした上で、適切な補修を行うでしょう。
3-2-4.水漏れや防水など、特殊な補修
水漏れが発生している場合は、下地の補修が必要です。外壁のひびから入りこんだ雨水が構造体にまで達しないように、外壁防水シートを利用します。下地の補修はお金がかかりますが、とても大切なことです。下地の補修と同時に、防水対策も必要になるでしょう。防水加工を施した塗装を利用するなど、防水対策もさまざまです。業者や外壁の状況によって異なるため、きちんと調査することが大切なポイントとなります。
4.外壁の補修を頼む方法
適切な外壁の補修ができるかどうかは、業者選びにかかっています。ここでは、業者の選び方や工事の流れ・工期・費用とコストを抑える工夫・注意点についてチェックしていきましょう。
4-1.業者の選び方
どの業者を選ぶべきか悩んだときは、以下のポイントを参考にしてください。
- 丁寧でスピーディーな対応か
- 見積もり内容が明確で細部まで記載されているか
- 外壁補修・塗り替えの実績があるか
- 低費用かつ高品質な補修ができるか
- 補修前に、事前調査を行うか
4-2.工事の流れ
外壁の補修工事が完成するまでの大まかな流れは、以下のとおりです。
- 業者に補修工事を依頼する
- 事前調査を行い、外壁の状態を確認する
- 調査結果をもとに、最適な補修工事のプランを提示
- 最終的な見積もりを確認した後、契約→工事開始
- 工事後、最終チェックをして完了
主な流れは以上のようになりますが、細かいところは業者や外壁の状態によって異なります。契約前に、補修内容と見積もりを細部まで確認してくださいね。
4-3.工期について
外壁の補修にかかる工事期間は、約1週間~10日です。ただし、あくまで目安となるため、状態が軽度であれば、工期も短くなるでしょう。逆に、状態がひどい場合は10日以上かかる可能性もあります。外壁の状態や補修内容、天気によっても工期が変わるので注意が必要です。
4-4.費用とコストを抑える工夫について
外壁の補修にかかる費用は、およそ3万~200万円と幅広い傾向があります。部分補修の場合は、足場が必要ないので3~5万円で済むでしょう。外壁全体窓枠のコーキングであれば25~35万円、外壁塗装は60~100万円、サイディング重ね貼りは130~200万円程度です。できるだけ、費用を抑えたい場合は、早めに補修を行ってください。時間が経過するほど状態が悪化し、補修内容が深刻になってしまいます。その分、費用もかさむのです。
4-5.注意点
「補修後、すぐに不具合が出てきた」「ひび割れがもっとひどくなった」など、業者との間でトラブルが続出しています。外壁の補修や塗り替えは、手抜きしやすい工事です。トラブルを未然に防ぐためには、慎重に業者を選ばなければなりません。たとえ、知り合いからおすすめされた業者だとしても、ほかの業者と比較してみてください。比較することで優良業者と不正業者を見極めることができます。
5.外壁の補修にかんしてよくある質問
外壁の補修にかんしてよくある質問を5つピックアップしてみました。
5-1.外壁の補修・塗り替えに適した時期とは?
外壁塗料が乾きやすい春と秋がおすすめです。梅雨は雨の日が多く、工期が長引く可能性があります。また、冬も乾燥しているので塗料の定着は良いですが、日照時間が短いので作業可能な時間が短くなり工期が延びるでしょう。
5-2.事前調査で何が分かるのか?
事前調査では、どこがどのような状態になっているのか確認できます。特に、雨漏りをしている場合は、水の浸入経路や原因が判明できるのです。原因が分かれば、適切な方法で補修ができるでしょう。事前調査を行わない業者には、依頼しないようにしてください。
5-3.自分で補修するリスクとは?
個人が行う補修は、いつまで効果が持つのか分かりません。適切な補修をしなければ、すぐに不具合が出てくるでしょう。せっかく時間と手間をかけて補修をしたのに、またすぐにひび割れなどが再発する可能性があります。二度手間にならないためにも、業者に依頼したほうが安心です。
5-4.0.05mm以内のクラックは補修しなくて良いのか?
0.3mm以内のクラックは、すぐに補修する必要はありませんが、常に状態をチェックしておかなければなりません。0.05mm以内のクラックにかんしては、特に補修は必要ないでしょう。外壁にクラックはつきものですが、定期的に様子を見てください。クラックが太く、長くなるようであれば補修が必要です。
5-5.外壁塗装をお得に行うポイントとは?
外壁の塗り替えや補修には、足場を設置しなければなりません。実は、足場の設置だけで約15~20万円かかります。そのため、外壁塗装と同じタイミングで屋根塗装や太陽光パネルの設置なども行うと良いでしょう。別々で工事をするよりも、足場の分が節約できます。
まとめ
いかがでしたか? 外壁の補修は、美しい外観を保つだけでなく、建物内に浸入する雨水やホコリを防ぐために必要な作業です。10年に1回はメンテナンス・塗り替えをしていかなければなりません。ひび割れや塗膜の浮きなどの不具合を放置すれば、さらに状態が悪化し、家全体の耐久性が低くなってしまいます。早めに対処するためにも、外壁の補修が必要な状態を把握しておきましょう。定期的に、外壁の状態をチェックすることも大切ですよ。