オール電化住宅は本当にお得? 知っておきたいメリットデメリット

2016年の電力自由化により、電気代見直しへの関心が高まっています。太陽光発電の住宅を目にすることも増え、オール電化住宅が気になっている家庭も多いことでしょう。オール電化住宅は、近年ますます普及が進んできました。「お得で安全」というイメージがあるオール電化ですが、実際のところはどうなのでしょう? オール電化の導入を検討する場合、メリットだけでなくデメリットについても知ることが大切です。そこで、この記事では、オール電化についての基礎知識やメリット・デメリットについて説明します。

  1. オール電化とは
  2. オール電化のシステムについて
  3. オール電化のメリットデメリット
  4. よくある質問

この記事を読むことで、オール電化の特徴が多方面から分かります。新築やリフォームでオール電化の導入を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

1.オール電化とは

まずはオール電化とはどういうものか、そのしくみについて知りましょう。

1-1.どういうものか

オール電化とは、給湯・調理・暖房など、生活に必要な熱源をすべて電力により賄う住宅のことです。具体的には、ガスや灯油の給湯器をエコキュートや電気温水器に、ガスコンロをIHクッキングヒーターに、石油やガスファンヒーターをエアコン・床暖房・蓄熱ヒーターなどに交換します。

1-2.しくみ

オール電化では、昼間より夜間の方に安い電気代が設定された料金プランを利用します。電気代が安い深夜の時間帯に、蓄熱やお湯を沸かすシステムを使って、電気代を抑えるしくみです。
オール電化の給湯システムには、エコキュートが使われます。これは、ヒートポンプの原理を利用してお湯を沸かすシステムで、正式名称は「自然冷媒ヒートポンプ給湯器」というものです。ヒートポンプとは、空気を集めて圧縮することで高温とし、この熱を冷媒により水に伝えてお湯を沸かします。空気を圧縮すると高温になる性質は、圧力鍋を考えると分かりやすいでしょう。エコキュートでは空気を圧縮するために深夜電力を使います。沸かしたお湯は、電気で保温するのではなく、断熱材を使った貯水タンクにためるのです。このシステムは熱効率が高く、電気温水器の約1/3のエネルギーでお湯を沸かすことができます。

1-3.最近の傾向など

オール電化住宅の普及率は、2015年度で11.8%です。すでに、10世帯に1世帯はオール電化になっています。新築に合わせてオール電化にする傾向が強く、2015年の新築のうち、88.2%がオール電化を採用しました。また、最近のオール電化住宅は太陽光発電を取り入れる住宅が多くなっています。

2.オール電化のシステムについて

オール電化は、給湯・暖房・調理に、それぞれ専用のシステムがあります。順番に説明しましょう。

2-1.エコキュートについて

オール電化の給湯システムがエコキュートです。しくみは前述の通りで、空気を集めるヒートポンプユニットとお湯をためる貯水タンクを屋外に設置して使用します。タンクの容量は、家族構成やお湯の使い方によって選びましょう。深夜にお湯を沸かしてためておくスタイルなので、使い方によってはお湯が足りなくなることもあります。大容量だと湯切れの心配はありませんが、電気代がかかるので、バランスを考えましょう。

2-2.暖房について

昼間に電気代が高いオール電化では、夜間の安い電力を暖房にも使うシステムがあります。蓄熱式暖房機は、電気代が安い夜間に暖房器内の蓄熱体に熱をためておいて、昼間に熱を放出して室内を温めるものです。また、床暖房は、ヒートポンプでつくったお湯を利用した温水式の床暖房を採用するケースが増えています。夜間に安い電力でつくったお湯を使うため省エネです。

2-3.IHクッキングヒーターについて

IHクッキングヒーターは、火を使わずに調理ができます。IHとは電磁誘導加熱(Induction Heating)のことで、電磁波によって鍋底自体をヒーターのように発熱させ、鍋の中身を加熱するしくみです。炎が上がることもなく、トッププレート自体は熱くならないので、高齢者にも安全といわれています。

2-4.オール電化が向いている家庭とは

夜間の安い電力を使うオール電化は、昼間の電気代は高くなります。このようなシステムを持つオール電化の住宅が向いているのは、平日の昼間に家に誰もいないような家庭です。たとえば共働きで子どもは学校に通っている家庭がこれにあたります。高齢者がいる家庭でも、日中はデイサービスなどに行く場合は向いているといえるでしょう。逆に、自宅で毎日仕事をしている自営業や、専業主婦で赤ちゃんがいるような家庭にはあまり向きません。
また、新築やリフォームで太陽光発電の導入を予定している場合には、電気代はさらに安くなるので、オール電化を採用してもいいでしょう。

2-5.そのほか、注意点など

オール電化は、設置後にガス電気併用に戻すことは困難なため、慎重な判断が必要です。自分の家庭のライフスタイルを長期視点で考えて導入を検討しましょう。

3.オール電化のメリットデメリット

オール電化の特徴を、メリットとデメリットに分けて説明し、実際の電気代や節約方法についても紹介します。

3-1.メリット

  • ガスよりも火災に対する安全性が高い
  • ガスの料金がかからない
  • 熱源を一元化することで光熱費の管理が楽
  • 安い深夜電力を使うことができる
  • 室内空気が汚れない(一酸化炭素中毒の心配がない)
  • 災害時の復旧が早い
  • 災害時はタンクにためた水やお湯を生活用水として使うことができる
  • IHクッキングヒーターは掃除がしやすい

3-2.デメリット

  • 設備の設置コストが高い
  • 昼間の電気代が高くなる
  • IHクッキングヒーターが調理スタイルや好みに合わない場合がある
  • 修理や買い替え費用が高額
  • 停電すると何も使えない
  • 鍋類をすべてIH対応に買い替える必要がある(土鍋は使えない)
  • 深夜に低周波音が出る可能性がある

3-3.オール電化の電気代

電気代は電力会社によっても設定が違うため、一概にはいえませんが、民間の電気とガスの見直しサービスの試算によると、電力7社のオール電化の電気代平均額は年間で190,868万円、ひと月あたりは約15,905円となっています。総務省統計局の家計統計調査によると、2014年の一般家庭の電気代は平均で年間134,441円、ひと月あたり11,203円です。これにガス代や灯油代が加わって、年間平均223,812円となっています。つまり年間で、オール電化の方が約3万円安いということです。

3-4.節約のポイント

オール電化向けの料金プランは、各社とも複数のパターンを設定しています。まずは電力会社と契約するプランを、ライフスタイルに合ったものにすることです。日中はほとんど電気を使わない、休日は家で過ごすことが多いなど、自分たちの暮らしのパターンを洗い出し、合わせたプランを選んでください。その上で、電気料金が高くなる時間帯と安くなる時間帯を把握し、電気の使用時間を安い時間帯にずらしましょう。炊飯や洗濯・乾燥など、タイマー機能を利用すると便利です。
設備の使い方でも節約はできます。エコキュートには省エネモードが備わっていますが、季節によってモードを使い分け、電気料金が高い時間帯に使わないようピークカット設定をしておきましょう。お風呂のお湯は、追い焚きよりも高温足し湯を使った方が省エネになります。また、旅行などで家を空けるときには、「自動沸き増し」の停止や「沸き上げ休止モード」を設定することで、無駄を省くことができるでしょう。

3-5.省エネ効果について

オール電化のシステムは熱効率がいいので、省エネ効果が高いのが特徴です。暮らし方にあった料金プランを使い、前述した節約を心がけると、年間2万円程度節約できることもあります。正しい設定や使い方を知り、暮らしを見直すことが大切といえるでしょう。

4.よくある質問

Q.オール電化にすると電気代が安くなるのですか?
A.ガス併用の場合の電気代と比べて、電気代自体が安くなるというわけではありません。光熱費としてトータルで考えた場合は安くなる可能性があります。

Q.新築でなくてもオール電化にできるでしょうか?
A.リフォームすることで対応可能です。ただし、エコキュートのユニットを設置する場所の確保が必要になります。

Q.4人家族ですが、タンクの容量はどのくらいでしょう?
A.エコキュートのタンクは、メーカーにより容量は違いますが、数種類用意されています。230Lで2~3人、370Lで3~5人、460Lなら4~7人を目安としてください。

Q.オール電化でも新電力に乗り換えると電気代が安くなりますか?
A.新電力会社には、オール電化用のプランを用意していないところもあるため、各プランの内容をよく検討しましょう。

Q.オール電化にすると電磁波が心配です。
A.オール電化でも、住まいの電磁波は一般の住宅とそれほど変わりません。IHクッキングヒーターの電磁波は電子レンジに匹敵するほどの高レベルですが、安全基準を満たしているため、必要以上に恐れることはないでしょう。

まとめ

オール電化は万人に合うシステムというわけではありません。よく特徴を捉えて、メリットとデメリットを踏まえた上で、自分の家庭に導入すべきか考えることが大切です。その際、経済面だけでなく、ライフスタイルの変化や環境への影響など、あらゆる視点から検討しましょう。